皆で、生きる・・・。第6話(最終回)

こんばんは。

いよいよ、『皆で、生きる・・・。』シリーズも最終回を迎えました・・・。

さて、どうしても・・・お話ししておきたい事があると、『筆頭与力』が言っています。

前回の第5話に引き続き、お話ししてもらいましょう・・・

『一旦止めた』あのお話しをしておこうと思います。

そう、それは・・・『筆頭与力の最期』

元々、『奥さんより先に、自分が亡くなっている』とは感じていましたが、

どういう最期を迎えたのか・・・?を、どうしても知りたかったんです。

『それを知って、どうするんですか?』

今までに見た事が無い、先生の強い表情がそこにありました・・・。

過ぎ去った大昔のお話しです・・・もう、時間は帰って来ません。

私にとって『筆頭与力』はヒーローでもあるんです。

今生、結ばれる事はなかった『ご縁』

せめて、当時の2人が幸せであったと信じていたかったんですが・・・。

私は、盗賊の頭(かしら)を召し捕りました・・・。

強盗・火付けの罪で捕らえたのです。

私が盗賊の頭(かしら)を召し捕った話しは、すぐに広がりました。

噂とは、良くも悪くも・・・です。

犯罪に関心が無い、犯罪とは程遠い人達は捕らえた事に賞賛するでしょう。

しかし・・・捕らえられた人間は素直に反省するんでしょうか・・・?

少なくとも、私の場合は違いました。

自分達の頭(かしら)を捕らえられた事で、一味の恨みを買ったのです・・・。

その日は、花曇り・・・

私は、その日の勤めを終えて、奥さんが待つ家に帰る途中でした。

辺りには何もない砂利の空き地。

そこで『奇襲攻撃』を受ける事になったのです。

私は元々、2刀流を使いこなしていた剣豪だったそうです。

大勢の人間でも相手に出来た。

しかし・・・私は、奇襲攻撃に参じた20人程の盗賊一味を、

戦わずして説得しようと思っていました。

説得に応じてくれるのであれば、『奇襲攻撃は見逃す』つもりでいたのです。

彼らは、違いました・・・。

元々、私を殺す気で来ていましたから、説得じゃ済む訳がありません。

私のアタマの中では、『どうにもならん・・・』という生死の言葉が去来します。

ここで、刀を抜かなければ『斬られる・・・』

家で待っている奥さんの事が思い浮かびます・・・『家に、帰りたい・・・。』

もし、ここで此奴らを斬っても・・・必ず、次がある。

私が迷った隙に、斬り込んで来ました。

きっと、私に敵わないとなれば・・・ 家の奥さんが殺られる・・・。

そんな事、絶対あってはなりません。

もちろん、私も刀を抜きました・・・味方は居ません。

『一か八か』で、斬れそうな奴を斬って行きます。

記憶の中では、5,6人は斬っています。

その中で、私は最初に左の影脇腹を刺され、

動きが鈍くなった時、右腹部を刺されました。

その刺し傷が深く、致命傷になった気がします・・・。

その間に背中も斬られていますし、刺されています。

残念ながら・・・もう、ここから先の『筆頭与力本人の記憶』はありません。

たしかに人を斬った・刺した感覚同様に、斬られた・刺された感触も分かります。

どちらかと言うと、刺された感触がよく分かります・・・。

両足・腰部、顔、首も斬られています。

お芝居のように、有り難くも1人1人斬り掛かって来るのとは訳が違います。

大勢となれば、相手は気が大きくなって攻めて来ます。

ここからは、『ユーリ先生』が見ている光景を書きましょう。

斬られた原因は、私が『刀を抜くのが、一瞬遅かった』そうです。

私は、めった刺し・めった斬りにされていると言います。 余程、憎かったようです。

遺体は、何処がどの部分なのか、分からない程・・・もう、散らばった肉片です。

この遺体が、一体誰なのかが分からない状態になってしまった訳です。

現在の私が視ても、ここで人が斬られたというのが『嘘』というくらい何もありません。

血に染まった砂利と、着物の切れっ端、かつて人間を形成していたであろう

破片が広がっているだけです。

『タイムマシーン』があったら、形振り構わず助太刀したいくらいです。

しかし、ここまでになっていると、さすがに諦めが付きます・・・。

もちろん、その事態を知らない奥さんは、心配し、必死に探し回っていたそうで、

私は失踪者扱いになりました・・・

捜索中、その現場付近に落ちていた着衣の一部、刀、紫十手から特定出来たそうです・・・。

刀の場合、『鍔』を見れば誰のモノか、仲間内なら分かります。

顔も残っていない残忍な殺され方をしていた為、

さすがに奥さんには、私の遺体を見せられず・・・

奥さんとの対面は、墓前で果たされたのです。

そのお話しを聞いた時、その当時の『斬られた自分』を背負う事になったんです。

1ヶ月程・・・苦しかったですよ。

悩みました・・・『なぜ、刀を抜くのが遅れたのか?』『死を選んだのか?』

連中に温情を掛けず、早く刀を抜いて『生き抜く』事だけを考えていれば、

きっと、愛する奥さんの元に帰れたのに・・・

またまた、私は『女性を泣かせてしまった』訳です・・・。

あの時、彼奴らを斬っていたら・・・奥さんが復讐の標的になってしまったかも知れません。

そう、私は『大切な人を守る為に、斬られたんです。』

奥さんには、悲しい想いをさせてしまったけれど・・・怖い想いをさせずに済んだ。

『筆頭与力』は、生きて帰りたかったはずです・・・。

奥さんと、一緒に食事をしたり、話したり・・・もっと一緒に生きていたかったでしょう。

奥さんには『本当に可哀想な事、悪い事したなぁ・・・』と今も反省しています。

そんな過去があったんじゃ、今生は元奥さんを見送らなきゃいかんですね・・・。

ここで、疑問を投げ掛けられました。

それは『刀を抜くのが一瞬遅れた・・・。』 私の判断が間違えていたのか?

という疑問を、筆頭与力から今の私に投げ掛けられました。

奥さんに危害が及ぶ事を恐れた筆頭与力・・・

末永く奥さんと一緒に居る為には、盗賊一味を斬らなければなりません。

しかし、また次に自分が襲われる事だって、奥さんが襲われる事だってあります。

奥さんには会えなくなってしまうが、自分が斬られて終わりにするか・・・。

『斬るか』『斬られるか』2つの選択肢・・・20人の人殺しに囲まれた時、

今、読んで下さっている貴方なら、奧さんの為にどっちを選びますか・・・?

『ここで終わらせよう』と自身が考え、斬られたならば、コレは『自殺』になるのか?

『大我の生き方での自殺』『小我の生き方での自殺』その行為に『愛』があるか・・・?

私は疑問に思っていました・・・その当時の自分に合点がいっていれば、

当然、放念して今も考える事はありませんから、贖う気持ちは皆無でしょう・・・。

今も、自分自身で納得していないから、彼自身が疑問に思う訳です。

私は、筆頭与力に答えました。

『奥さんを傷付けたくない・・・』という『守りたい』『愛』を持った判断に於いて

相手に斬られたとするなら、『かけがえのない愛情を持った行為』であって、

『大切な人を、守る為に斬られた。』これは賞賛に値する。

貴方の行為は、全く間違っていなかった・・・むしろ、正しい。

それで、良かったんです・・・と。

今、一緒に居る彼、筆頭与力は素直に納得したようでした。

『ユーリ先生』の鑑定の直後から、私にのし掛かった重苦しさは、

いつの間にか消えていました・・・。

しかし当時、筆頭与力が毎日考えていた事の『心の記憶』は、今も名残を残しています。

『出掛けたくない』『もしかしたら、帰って来られないかも知れない』

『今日が最後かも知れない』こんな事を、何気無く想うのです。

考え方を変えれば、『自己防衛に優れている』『安全の為に何をしておくべきか』

『今日、何をしておくか』と、前向きになれると思うんですよね。

10年前、お仕事でお世話になった住設機器メーカーの課長さんに言われました。

『与力さんは、武士道の精神を持った人ですね。いつも何か覚悟しているのが分かる。』と、

不意に言われた事がありました。

筆頭与力の生き方、人の愛し方・・・『守る』というポリシーが、

今を生きる私の中にも貫かれています・・・。

筆頭与力さん・・・やっぱり、貴方は私の誇りです・・・。

いつまでも、素敵な貴方と一緒に居たい・・・傍に居て下さい。

そして、元奥さんとの約束、一緒に果たしましょう。

さて、如何だったでしょうか・・・?

なかなか、こういった内容のお話しって、無いんじゃないかと思います。

『前世』なんて信じないよ・・・そんな方もいらっしゃると思いますが、

大丈夫です・・・死んだ時にちゃんと分かりますから(^^)

『死』は皆に訪れます・・・お金持ちの人にも、そうではない人にも。

コレは絶対的な平等です。

その瞬間が、何時か分かりません。

自分が亡くなってから、この世に生まれて来た『宿題』に気付いても遅いんです。

その『宿題』をこなすまでは、故郷には帰れない訳です。

肉体が年老いて、荼毘に付しても・・・『宿題』が終わっていなければ、

また、この世へ降りて来なければならないんです・・・。

また1から歩き始め、言葉を覚え、学校で学び・・・

私は、もう生まれ変わって来たくありません。

だから、今日まで必死に『宿題』を頑張って解いて来ました。

そして、有り難い事に・・・その『宿題』も終わりました。

もう、『定年』を迎えました。

今、この眼で見える周りの人やモノ達が、とても愛おしく想えてなりません。

今までの、全6話までをお読みになって下さって、

ご自身に当てはめてみて、解ったり・気付いた部分があったかと思います。

それは、今まで永い歴史を積み上げて来た『経験』の集大成が『現在』である事。

ついさっき出来たモノとは違います。

『僧侶』だった自分

『筆頭与力』だった自分

『レーサー』だった自分

そして、『今』の自分・・・

今の時代を生きている自分の中に、皆の叡智が宿っている。

そう、『皆で、生きる・・・』

自分自身の個人情報丸出し、この恥さらしのお話しは、ほんの一例にしか過ぎません・・・。

コレを読んで下さっている貴方・貴女にも、優しい物語がきっとあるはずです。

それに気付く事で、自分の傍に居てくれる人や、モノを一緒に大事にしてみませんか・・・?

同じ想いの誰かが、必ず傍に居て応援してくれます。

きっとね・・・。

深夜ラジオ的な、四方山話でした・・・。

おしまいです(^^)/


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